先月の学会で講演した「BASEとセロトニン」から、セロトニンとストレスに関するお話をしたいと思います。
まず
1.セロトニンとは
セロトニンはトリプトファンという必須アミノ酸から作られる神経伝達物質でありホルモンでもある物質です。
セロトニンは別名「幸福ホルモン」と呼ばれ、セロトニンが代謝されると「眠りのホルモン」であるメラトニンになります。
セロトニンは体中に存在しますが、その90%は消化管粘膜にあり、次いで8%が血小板、そして2%が脳内にあります。
消化管では腸の蠕動運動(増えれば下痢、減れば便秘に)、血小板では血液凝固や血管収縮活動などに関与します。
ではセロトニンは脳内でどのような働きをするのでしょうか。
2.脳内におけるセロトニンの働き
脳内におけるセロトニンの働きは、大脳に働きかけて覚醒状態を調節したり、心の領域に働きかけて意欲や心のバランスに関係したりします。
また、痛みの調節や自律神経に関係したり、姿勢筋に緊張を与えるなどがあります。
挙げればキリがないほど、セロトニンは様々な脳活動に影響します。
ただ、もし一言でその働きを表すならば、
「セロトニンは脳活動水準を一定に保つ働きを持つ」 と言えそうです。
一定といっても、ある程度一定またはほどほどのレベルと捉えてください。
それはまるで、車のエンジンにおける安定したアイドリング状態を保つような働きと言えます。
3.脳内セロトニンの減少
もし脳内セロトニンが減少すると、どのようなことが起こるでしょうか。
目覚めが悪くなったり、よく寝れない
不安になりやすく、気持ちが落ち込みやすい
集中力が低下したり、自律神経失調症になる
頭が重くなったり、イライラしやすい
姿勢が悪くなったり、見た目が弱々しくなる
疲労感が取れなかったり、うつ状態やうつ病になる などです。
これらの状態は脳内セロトニンの分泌が減少すると起こる諸症状ですが、言い換えれば、これらは脳が安定して活動できなくなると起こる問題なのです。
(セロトニンとストレス2に続く)