引き続きセロトニンのお話です。
では減った脳内セロトニンを増やすには、どのような方法があるのでしょうか。
セロトニンは消化管粘膜に多く存在しますが、分子量が大きすぎて脳内には入れません(血液脳関門)。
つまり脳内セロトニンを増やすには、脳内でセロトニンが作り出される必要があります。
うつ病などではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などが処方されますが、これも実際にどれだけ脳内で効果を発揮しているか不明瞭です。
仮に確実に効果を発揮していれば、世の中のうつ病患者数は減少または減少傾向を示すはずです。
では材料となるトリプトファンをたくさん摂取すると増えるでしょうか。
確かに増える可能性はありますが、取り込む際に他のアミノ酸等と競合するそうで、確実とは言い難いようです。
セロトニン研究の第一人者でおられる有田秀穂先生によると、以下の方法が有効のようです。
1.太陽の光(または高照度2500‐3000ルクス)
2.リズム運動(歩行運動・咀嚼運動・呼吸運動)
3.グルーミング行為(実際にマッサージするようなグルーミングから、人とのふれあいなどを含む)
1.太陽の光:
これは網膜からの刺激を必要とするので、目で見てその明るさを感じる必要があります。
ですから、目を閉じたまま身体で浴びても効果は期待できません。
また2500‐3000ルクスの明るさですが、デパートのショーウィンドウや重要陳列台で2000ルクス以上だそうです。
ちなみに「眠りのホルモン」であるメラトニンは、300‐500ルクスでその分泌が阻害されるそうです。
この300‐500ルクスはリビングの明るさに相当するそうです。
ですから、就寝前のPCやスマホ、TVやタブレットなどは控えた方が良さそうです。
余談になりますが、朝の目覚めで光を浴びると、およそ16時間後にメラトニンの分泌が始まるそうです。
ですから、起きる時間を一定にすると眠くなる時間がおおよそ決まるため、生活リズムを整えやすくなります。
また、セロトニンが急激に増えると頭痛の原因になるそうなので、偏頭痛持ちの方は注意が必要です。
2.リズム運動
セロトニンはリズム性の刺激に好反応を示します。
特に歩行や咀嚼、呼吸といったリズム運動は、動物の生命維持には欠かせない運動です。
ですが、当院へ来られる方々の中には、上記の運動が上手くできない方が多く見られます。
痛みや機能障害による歩行困難や、歯ぎしり・噛みしめ等による顎関節の障害、また自律神経の問題による呼吸不全、などです。
セロトニンを増やす呼吸法は、吸気よりも呼気を長く、ゆったりと呼吸するのがポイントです。
ですが、交感神経の過剰興奮状態にある方は、常に浅くて早い呼吸になりやすいです。
ご本人の自覚がある・なしに関わらず、これらの問題は後述する問題と直結しています。
また、我々臨床家は運動機能の改善を得意分野としておりますので、いま無理にウォーキングやその他運動を行うよりも、ちゃんと改善してから行う方が効果的です。
3.グルーミング行為
マッサージのように実際に刺激することで「幸せホルモン」や「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンが分泌されることは研究からわかっておりましたが、セロトニンも増えることが立証されたようです。
また、人とのコミュニケーションによっても、その効果が期待できるようです。
当院ですと、マッサージの様に直接触れながら会話をしますから、より期待できるかもしれませんね。
グルーミング行為はさておき、太陽の光を浴びたりリズム運動を行うことは、それほど難しいことではありません。
ウォーキングや呼吸法・瞑想も20分ほどで効果が期待できるそうです。
セロトニンとストレス3では、脳内セロトニンが減る原因についてお話します。