前回は減ったセロトニンを増やす方法をお伝えしました。
今回は、なぜ脳内セロトニンが減るのかについてお話します。
セロトニンが減る原因、それはズバリ「慢性ストレス」です。
ですが、先述しませんでしたが、実は脳内セロトニンの分泌はストレスの影響を受けません。
これは一見矛盾するような話ですが、どちらも正解です。
では何が違うのでしょうか。
脳内セロトニンの分泌に影響しないストレス、これは別名「急性ストレス」です。
ネコの前に突然イヌが現れるような、または小動物がチーターに襲われるような、そんな状況が急性ストレスです。
ですが、影響する方のストレスは「慢性ストレス」です。
急性ストレスと慢性ストレス、どちらもストレスと名の付くものですし、慢性ストレスは急性ストレスが長引いたもの、とお考えの方もいると思います。
確かにそうですが、体内または脳内における状態としては、全く正反対の反応を示します。
ストレスについて勉強されたことがある方はご存知かと思いますが、欠かせないお二人の名前を紹介します。
アメリカのウォルター・キャノン、そしてカナダのハンス・セリエのお二人です。
ストレス研究の大家であるこの二人が、それぞれ提唱するストレスに関する記述は、まるで違います。
キャノン:ストレス刺激に対応した多様な反応が生体におきることと、この反応に「交感神経-副腎髄質ホルモン」が必須とした。
セリエ:刺激の種類によらず非特異的な反応が生体におきることと、この反応に「視床下部-下垂体前葉-副腎皮質ホルモン」が必須とした。
一見違いが分かりにくいかもしれませんが、ポイントはキャノンの「副腎髄質ホルモン」、セリエの「副腎皮質ホルモン」です。
どちらも副腎から分泌されるホルモンですが、髄質と皮質では、分泌されるホルモンの種類とその性格が違います。
上記のストレス反応に名前を付けるならば、以下の様になります:
キャノン:積極的ストレス反応
セリエ: 消極的ストレス反応
それぞれの特徴としては
積極的ストレス反応
「闘争か逃走」(Fight or Flight Response)
脳内・身体の活動性向上
頑張りが効く状態(火事場の馬鹿力)
心理的にはポジティブな状態になりやすい
消極的ストレス反応
副腎皮質肥大・胸腺リンパ節萎縮・胃十二指腸潰瘍(セリエの3徴候)
行動抑制・脳活動の抑制(感覚・行動の制限)
巣ごもり状態(引きこもり・フリージング・うつ状態など)
「降伏と忍従」(有田先生いわく)・心理的にはネガティブな状態
となります。こうして見ると、まるで反対ですよね。
積極的ストレス反応ではその名の通り積極的に行動することを促すのに対し、消極的ストレス反応では行動することを抑制しています。
言い換えると、消極的ストレス反応時には仕事に行くことも家事をすることも、身体的・精神的にしたくなくなる状態なのです。
ストレスによる自殺や過労死、成人病や精神疾患など、多くの問題の根源とされるストレスですが、その専門家は次のように述べています。
ストレスが私たちを殺すことはありません。それは、私たちのただの反応なのです。(セリエ)
(セリエのストレス反応に対して)ただし、この受動的ストレス反応は個体の存続という意味では大切であり、進化の過程で獲得された重要な適応機構である。
副腎髄質は攻撃と逃走の内分泌腺で、副腎皮質は降伏と忍従の内分泌腺であるといえよう。両者とも生き延びる上では価値がある。(有田秀穂)
古今ストレスが社会的な問題となって久しいですが、ではストレスの何が問題なのでしょうか。
(セロトニンとストレス4に続く)