セロトニンとストレス5では、抑制性の信号を興奮性の信号に書き換えて行動している問題について述べました。
くどい様で申し訳ありませんが、これを再度ストレス反応と関連するホルモンで説明いたします。
「疲れた」と「無意識下」の脳が発する「抑制性信号」は「消極的ストレス反応」です。
反対に、意識下で「興奮性信号」に書き換えて行動するのは「積極的ストレス反応」です。
そして、この状況が許されるのは「緊急時」のみです。
いわば「火事場の馬鹿力」のようなものですね。
その時にできたからと言って、その方法は何度も、そして長きにわたって使える方法ではないのです。
また、「消極ストレス反応」には「副腎皮質ホルモン」であるコルチゾールが関わります。
このホルモンは、肝臓での糖新生、筋肉でのタンパク質代謝、脂肪組織での脂肪の分解などの代謝の促進、抗炎症および免疫抑制などの働きを持ちます。
これは、生命維持に欠かすことのできない作用です。
しかし、慢性ストレス状態が長く続くと疲憊期といって疲れ果てた状態になるのですが、その状態になるとコルチゾールを分泌できなくなります。
すると糖新生や脂肪の分解ができずエネルギー切れとなり、脳はうまく働くことができません。
脳が働けなければ、考えることも行動することもままなりません。
これに対して「積極的ストレス反応」には「副腎髄質ホルモン」であるノルアドレナリンが関わります。
ノルアドレナリンにも様々な作用がありますが、主に交感神経の興奮を促す働きを持ちます。
交感神経は我々が覚醒している間、その活動性に合わせて興奮度を変えて各器官を最適化しています。
ですが、先の「消極的ストレス反応」状態から「積極的ストレス反応」へ書き換えを行うと、交感神経を過剰なまでに興奮させなければ行動できません。
ちょっとイメージしにくいかもしれませんが、もし平常な状態がゼロ(0)だとして、仕事や家事など日常的に求められる行動に伴う交感神経の興奮度がプラス5(+5)だとします。
プラス5程度の活動量/興奮度であれば、多少疲労は感じても一晩寝れば大丈夫なくらいのものと思ってください。
ですが、もし今あなたが「消極的ストレス反応」状態にあって、レベルがマイナス5(-5)だとどうなるでしょうか。
マイナス5の状態でいつもと同じことをすれば、その際に求められる交感神経の興奮度はプラス10(+10)になってしまいます。
つまり、いつもの2倍も頑張らないと同じことができないのです。
この「頑張り」ですが、一時的な頑張り(興奮性信号への書き換え)であれば、その後は平常な状態へ戻りやすいです。
ですが、この時に頑張ってできたからといって、その後も頑張ることを繰り返すとどうなるでしょうか。
頑張るたびに交感神経系の興奮度は上昇することになります。
そしてこの興奮は、あなたが平常であると思っている時や就寝時にまで過剰興奮が続くようになります。
そうすると、なかなか寝付けない、眠りが浅い、嫌な夢を見やすい、寝ても寝ても疲れが取れない、朝起きれない、等の症状が出始めます。
また、日中であっても眠気があったり、仕事に集中できない、動悸・息切れ、不安感などの症状も起こります。
交感神経系の興奮が高いと筋緊張も強くなりますから、肩こり、腰痛、頭痛、血圧の上昇、内科的な問題なども発症しやすくなります。
人間社会において「頑張る」ことは良いこととされていますが、生物的には弊害も多いのです。
もちろん生物として生き延びる上で頑張ることは必要ですが、それを多用したり常用することは、自らが自らの首を絞めることになります。
つまり「頑張る」なら、当然「休むこと」も併せなければならないのです。
もうおわかりかとは思いますが、ストレスは何ら問題ではありません。
問題はその対応なのです。